A1 転落
投稿:2022/10/14 更新:2024/03/24
SE歴49年 バイロン軍要塞「サドス・モルヴォサ」
(やれやれ、地球兵に押されているとはいえ機体の整備もままならないのか。)
片腕のない白のポルタノヴァが高速でアルトに接近し、切り刻む。
SE歴49年、バイロン軍が新たに建造した要塞は地球連合軍の繰り出す新型のアルトに戦力の6割を削られ、ゲート生成用のエネルギーを調達できるほど戦力は残されていなかった。要塞はかなりの攻撃を受けたのか第一装甲はほとんど剥がれ落ち、制御を行う乗組員も残りわずかであった。エグザマクス用の部品なんてものはとっくに底を尽き、この白いポルタノヴァも片腕は修復されずに戦い続けていた。その横、頭部をまるごと失った機体の周りで2人が話をしている。
「なぁ、この腕をどうにか俺の機体に付けれないか。」
「無理ですよゲイルさん。こっちは母星からの仕事もあるんですから。」
ゲイルと呼ばれたその男は苦笑いをする。
「相変わらず仕事に追われてるなお前...」
「だって私は昔から優秀なメカニックでしょ。それだけ仕事が降りてくるのよ。」
もう1人が自慢げに答えた。
「まぁ、うん。そうだな。ところでその設計図は?」
「これ?シエルノヴァさ。私の名前が使われるノヴァ系統の新型機。データはこれから母星の工場に送信するところ。」
彼女の名はシエル。ゲイルの昔からの友人で、この要塞のメカニックを指揮するリーダー的な存在だ。もっとも、この要塞に正規の整備士は彼女だけになってしまったが。
「で、この腕をくっつけろって話なんでしょ?それじゃあ早速...
その時、大きな衝撃と音が伝わる。いつもより緊迫した様子の放送が響く。
「アルトの大群が向かっている!」「残りの2部隊は待機!FH部隊出撃せよ!」
ゲイルは数時間前の戦闘から何も手を加えられていないポルタノヴァに走る。
「腕は?!」
「後でつければいい!片腕でも俺の操作技能があればこのぐらい...!」
呆然とするシエルに見向きもせずハッチを強引に開け、出撃するゲイル。その直後だった。
「今だ!!早く投げろ!」
ハッチが開き、ゲイルが出撃したその瞬間にテラーグレネードは格納庫へ投げ込まれ、要塞の下半分が丸ごと崩れ落ちる。
「...?!」
振り返ったゲイルが目にしたのはさっきまで自分とシエル、そしてほかの仲間が待機していた格納庫が塵と化した後の光景だった。
「あ...がっ...」
何が起きたのか理解できないゲイル。そこへ3体の青いアルトが迫る。
「棒立ちか!」
バックパックを切り裂かれ、地球方面へ蹴り飛ばされるポルタノヴァ。整備の行き届いていない機体のスラスターなど焼け石に水だった。
制御を失い、回転しながら大気圏へ突入する。
(緊急。緊急。機体温度上昇に伴い凍結装置作動。緊急。緊急...)
ゲイルは意識を失った。センサーを光らせたアルトの群れが要塞の方へ向かうのを見ながら。
2日後 地球
ゲイルは通信チャンネルの消失音で目を覚ました。主電源が全て落ち、酸素が残り少ないのを見たとき、自分はもう助からないと思った。コックピットの蓋を恐る恐るパージすると目に映ったのは砂の海。まさかと思い外へ出てみるとやはり地球だった。機体は黒く染まり、カメラ内部は水が溜まっていた。
「これが地球...なのか。」
全てが新鮮だった。資源の枯渇したバイロン星では常に見ていた光景なのに。自分が今、どんな状況にいるのかも考えずに。ただその景色を眺めた。
しばらくして彼はコックピットから1枚のメモリーチップを抜くと、砂の海を渡り始めた。
Mg6より
第一話閲覧ありがとうございます。今後も不定期更新を行うので時間があればよろしくお願いします。
追記:2024 3/11に再編集。文章を大幅に修正。
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